再建住宅建築家としての覚悟

理論として確かめてからでなければ、発言ができない状況であることはわかる。ところが、これが小手川氏の逆鱗に触れてしまった。この発言は、小手川氏にとって、決して得なことではない。設計後の監理はもともと彼に任されていた。能力も経験も、私に数段勝った建築家を帰してしまっては、再建の負担は大きくなるばかりだ。しかし、二度と小手川氏の心がK氏に開かれることはなかった。はからずも私は、建て主と建築家の微妙な関係を保つことの難しさを学ばせてもらった。私たち建築家にとっては、たくさんの中の一軒の家も、建て主にとっては、唯一無二の家なのである。K氏に悪気があったわけでは決してない。ただ、たまたま恐ろしい嵐のその場に居合わせなかった。結果、その心を思いやることがでおもんぱかきなかった。現実的に、家を破壊された建て主の心を慮るほどの経験がなかっただけなのである。かくて、設計補助だった私が、今度は中心となっての小手川邸再建が始まった。運命とはかくも恐ろしいものである。■再建l住宅建築家としての覚悟。私は、つくづく周囲の人に恵まれていたのだと思う。小手川氏は、再建にかかる費用を文句も言わずに出してくれた。また、地元臼杵の大工の棟梁板井さんは、若輩の私の指示をいやがらずに聞いてくれたし、他の大工さんたちとの間もうまく取り持ってくれた。何よりもありがたかったのは、長年の経験に基づく有益なアドバイスを、そのときどきにしてくれたことである。