台風を迎える準備

過去最大といわれる台風にも、耐える強度が備わっている。私は、手慣れた様子で台風を迎える準備を始める小手川氏を手伝いながら、さほどの不安は感じていなかった。南向きに大きく開けられた四枚窓の、障子、ガラス戸、網戸、雨戸はきちんと閉められた。新築の家の中を、万が一にも濡らしたりしたくなかったからである。しかし、風雨は強くなる一方である。小手川氏が、南向きの大きな四枚窓の前で、大声で私たちを呼んでいる。「天野さんたち、窓を押さえるのを手伝ってくれ!」。あわてて駆け寄り、窓に手を当てると、風の力でガラスがググーッと押きれてくるのがわかる。沖君も加勢してくれた。「手を離して!」。小手川氏の声とほぼ同時に、今度は、ガラス窓が外に向かって吸い込まれていく。風の力とは、こうも恐ろしいものだろうか。めいっぱい吹きつけた後は、負圧になって吸うのである。それが延々と繰り返される。ひときわ強く押された後の、急激な吸い込みに、雨戸が、耐えきれなくなって吹き飛びそうだ。ゴーッ、ゴーッ。そのうちに風が変わった。台風に慣れているはずの小手川氏も、「へんだ、へんだ」と首を傾げる。だんだんと風の吸い込みが減ってきて、ひたすら押して、押しての繰り返しになったのだ。一瞬、ビビビビビビビビーッと、家全体が揺れたような気がした。ブーン、ズッ、ブーン、ズッと、頭上で変な音がする。