降りそそぐガラスの中で

見上げると、大変なことが起きていた。屋根を支えている梁の上に、スッと白い線が見えたのだ。外の光である。それも竜巻でよく起こる稲光だ。あっ、天井と壁の間に隙間ができている。まさか、まさか、まきか。ブーン、ズッ、ブーン、ズッ、この音はいったいなんだろう。思うまもなく、梁を留めてある五寸(一五センチメートル)角の太い柱が裂け始めた。ブーンというのは、屋根を吹き上げる風の音。それが、一瞬できた隙間から聞こえるのだ。ズッというのは、梁と柱を留めてある鉄のボルトが、柱を裂いて行く音なのである。大きく張り出した屋根に、強い風を受けて、揚力が生じ、小きざみに振えていたのだ。そのせいで、屋根を留めてある梁も持ち上げられている。二メートルの庇が、飛行機の翼の役目を果たしているのだ。柱と梁を留めてあるボルトは一本だけではなかった。より強度を高めるために、短冊形の鉄板に穴をあけて、何本かのボルトで留めてあるのに……。■降りそそぐガラスの中で。「もうダメだ。地下室に逃げてください」。小手川邸は平屋だったが、片側が崖である地形を利用した半地下に、灰石の石積みを城壁のように組み上げた倉庫を造ってあった。とっさに、そこが一番安全だと思ったので、三人の息子さんと奥さんに避難を促した。と、その直後、バリバリバリバリー、突然、採光とデザイン性を狙って欄間に入れたガラスが割れて降ってきた。